アドラー心理学とは・・・ウィーン出身のアルフレッド・アドラーは、アメリカを中心に活躍してきた精神病学者、心理学者です。
ユング、フロイトに並ぶ、心理学の三大巨頭 とも言われていますが、日本では数年前に出版された「嫌われる勇気 著:岸見一郎」が火付け役となり、少しずつですが知名度が上がってきています。
アドラー心理学は「個人心理学」とされており、特徴は「すべての悩みは対人関係の悩みである」とした上で、フロイトの「原因論(なぜ、どうして)」に対し、アドラーは「目的論(なんのために)」で説いています。
そして、アドラー心理学では褒める事や叱る事にはリスクがあり、その代わりに共感することや勇気づける事を推奨しています。
ただ、最初に誤解がないようにお伝えしておいきますが、褒める、叱るは絶対にしてはいけない事ではありません。
場合によっては褒めることも、叱ることも大事です。
ただ、褒める事にも叱る事にもリスクがあるという事を今回はお伝えしていきたいと思います。
褒めても叱ってもダメ?!リスク・デメリットは?
まず、褒めると叱るは真逆な意味ではありますが、「賞罰」という一つの言葉にすることができます。
アドラー心理学ではこの「賞罰」にリスクがあると考えています。
賞罰のリスクをわかりやすくご説明するために、ある親子の日常のやりとりをA~Dの4つの例をご紹介します。
A.(子、小学1年生の場合)
子「ママ!今日テストで100点取ったよ!!」
母「すごい!じゃあ、今夜の夕飯はあなたが大好きなハンバーグにするね!」
子「わーい!!じゃあ、次のテストも100点だったら焼肉ね!!」
母「いいわよ~!頑張ってね!」
B.(子、小学6年生)
子「お母さん、今日のテスト100点だった」
母「すごい!!じゃあ、今夜の夕飯はあなたが大好きな・・」
子「夕飯はなんでもいいけど、新しいゲームが欲しいんだよね~」
母「じゃあ、次のテストも100点だったらゲーム買ってあげるよ」
C.(子、小学1年生)
子「ママ、今日のテスト50点だった」
母「なんでそうなっちゃったの?! 次のテストまでゲームは没収します!」
子「はい・・(シクシク)」
D.(子、小学6年生)
母「この間のテスト返ってきたんじゃないの?見せて」
子「まだ返って来てないな~(嘘)」
これは、同じ親子で小学1年生から6年生まで成長した際のテストの点数が良い時と悪い時の親子の会話です。
一見、よくある光景で何も問題がないように見えますが、このやり取りをしている際の子どもの心理を考えてみたいと思います。
Aの場合・・100点のテストが嬉しくてお母さんに報告したら、夕飯を大好きなハンバーグにしてもらえた!次頑張ったら焼肉だって!!わーい!⇒子どもは次のご褒美に向かって頑張ろう!という意欲で溢れています。
Bの場合・・100点のテストで好きな夕飯なんて幼稚なご褒美には釣られない年齢です。それよりも新しいゲームが欲しくて、テストで100点取った褒美として買ってもらおうと思うと次も頑張る気持ちでいっぱいです。
Cの場合・・焼肉目指して頑張ったのに、テストが苦手な部分ばかりが出てしまって更には次のテストまでゲームを没収なんて・・次のテストも100点取れなかったらどうしよう・・。叱られるのも、ゲームができない事も辛くて仕方がない。
Dの場合・・ゲーム買ってもらいたいけど、この点数じゃ無理だな。ばれたら叱られてまたゲーム没収とか嫌だから、まだ戻ってこないって事にすればいいや。しばらくしたらお母さんも忘れるだろうし。次に100点取れた時だけ見せればいいや。
知恵がついて来ているので、嘘やごまかしが上手になっていきます。
これが「賞罰」の例えの一部です。
今回は分かりやすく「物での賞罰」にしましたが、これは言動のみでも同じです。
大人もですが、子どもは褒められる事が大好きです。
褒められると次も褒めてもらいたくて頑張ります。
とてもいい相乗効果のように見えますが、果たしてテストは褒められる(褒美を得るために)頑張るものでしょうか。
例にも挙げた通り、子どもは成長と共に喜ぶものがドンドン大きくなっていきます。
テストの結果に関わらず、食べられる夕飯よりもゲームや漫画、お小遣いなど・・どんどん満足するご褒美のレベルは上がっていきます。
言葉がけにしても
「すごい!」「偉い!」「天才!」「あなたは秀才!」「日本一!」「世界一!」「宇宙一!」
などとレベルを上げていかないと満足できなくなります。
アドラー心理学ではこれを褒める事のリスクと言っています。
テストは褒められるために頑張るのではなく、普段の勉強の習熟度を図るための目安にすぎません。
100点だけがすごいのではなく、何点であっても本人がいかに頑張ったかが大切ですよね。
褒められるために頑張ろうとすることは、動機としては悪い事ではありませんが、100点以外は価値がないものになってしまうのは本末転倒ですよね。
つぎに、叱る事は時と場合によっては必要ですが、「罰」を与えることで子どもは次への不安を感じてしまいます。
そのことによって褒められることと同様に、叱られないように行動するようになります。
それが、嘘やごまかしという形になることも珍しくはなく、のちにバレたら叱られてしまう事でも、その場しのぎで叱られない方法を選んでいきます。
これが叱ることのリスクですね。
例にあげたテストで言えば、一生懸命頑張ったけれど、苦手な問題が出てしまって50点で、それだけで十分悲しいのに、家で叱られて更には気持ちを切り替えようと楽しみにしていたゲームまで取り上げられてしまうのは、悲しさが倍増ですよね。
その積み重ねで嘘やごまかしが上手になってしまうのは、親としても悲しい事だと思います。
褒めてはいけない、叱ってはいけない・・ではなく、褒める事、叱る事にはリスクがあるということを頭に入れておいてもらえるといいと思います。
アドラー心理学的な「認める・共感する子育て」とは?
それでは、先ほどのA~Dの例をアドラー心理学的に対応するならどうなるのか紹介していきますね。
A.(子、1年生)
子 ママ、今日のテスト100点だった!
母 そう! 頑張ったのね! あなたが嬉しそうでママも嬉しいわ。
B.(子、6年生)
子 お母さん、今日のテスト100点だった!
母 あなたの頑張りが点数に繋がったのね。 よかったね! おめでとう!
C.(子、1年生)
子 ママ、今日のテスト50点だった。
母 そう。 今残念な気持ちなのかな?
子 うん。頑張ったのだけど苦手なところが出て・・
母 そうか、頑張ったけど上手くいかなかったんだね。残念だったね。苦手なのに50点も取れてよかったね!
子 次はもっと勉強してがんばる!
D.(子、6年生)
母 この間のテスト返ってきたんじゃないの?見せてもらえる?
子 いや、あまりいい点じゃないから見せたくないな。
母 今どこが苦手なのか知ることが大切だから、一緒に見直ししてみようよ。
これらの子どもの心理は次のようになります。
A.テスト100点!嬉しい!! 次も100点目指してがんばるぞ!
B.普段の頑張りを知っていてくれて嬉しい! 次も頑張るぞ!
C.50点でも頑張ったんだ! 次は苦手を克服して頑張るぞ!
D.あまりお母さんには見せたくなかったけれど、苦手な部分が分かったから次は間違えないぞ!
以前、私が講座を開催していた時に受講者の方から「こんなに上手くいくはずはない!テストの点数が悪くてもフラットな気持ちでいられるわけがない!」と意見をいただいた事があります。
これらは、一例ですので必ずしも同じ風にはならないとは思いますが、アドラー心理学では賞罰に代わる方法として「共感」が大切だと言っています。
これは、子どもであっても、夫婦であっても一人の個人として考え、課題はそれぞれ個人のものという大前提から入りますので、私たち親は基本的に子どもの課題には立ち入らない事が大切になります。(例外はもちろんあります)
今回、例に挙げたテストで言えば、テストという物自体が「子どもの課題」であるので、そこに親が賞罰を与えるのは、本来の目的とは違ってきてしまうのです。
子どもが喜んでいたら、嬉しい!子どもが残念がっていたら、残念だったね。
とてもシンプルですが、「共感」こそが、子どもが求めている事に一番近いのです。
例えば、大人の私たちが資格の試験を受ける際に、欲しいのはご褒美ではないですよね。
一番に欲しいのは合格通知で、誰かに何かを求めるとしたら、一緒に喜んでくれたり、一緒にドキドキしてくれたり、残念がってくれたりと共感の気持ちだと思うのです。
ご飯をご馳走してもらえたり、褒めてもらえたら嬉しいけれど、ご飯をご馳走になりたいから資格試験に挑むわけではないですよね。
子どもでも同じです。
褒める、叱るがダメなのではなくて、そればかりになってしまって原動力が
「褒められたいから」
「叱られるのがいやだから」
になってしまうと本来の目的が変わってきてしまいますよね。
それでも前に進む力になっている時はいいのですが、だんだん「褒められないからやらない」「叱られるから隠す」になりがちなのが賞罰の一番のリスクなのです。
結局は「褒める」ことも「叱る」ことも、「評価している」という意味では同じです。
褒める行為も叱る行為も、子どもの行動を常に「いいことか」「悪いことか」、親が自分の基準で評価しているということになるんですね。
褒める=あなたの行動はイエス(いいこと)よ!
叱る=あなたの行動はノー(悪いこと)よ!
褒めるか叱るかのどちらを選択しても、こんなメッセージを送ることになるんです。
確かにある程度、道徳心を育てるときや、社会の規範を教えるときにはNOを言うことも必要になります。
絶対してはいけないこと、つまり他人をいたずらに傷つけてしまったり、犯罪を犯すことはダメ!ということは、親の判断というよりも、社会で生きていくうえで必要な道徳心です。
それらは叱るというよりも、しっかりと教え込むことが必要になりますね。
しかし行動のいい悪いを常に評価され続けた子供は、
・親の評価がいつも気になって、他人の顔色を窺うようになる
・褒めてくれないと勉強するモチベーションが保てなくなる
・常に評価してくれる人を求める
・自分の判断が不安で、自分で決断できない
・自分で自分を評価し続けてしまい、失敗した時には「自分はダメな人間だ…」と自己評価を下げてしまい、なかなか立ち直れない
こういったリスクが成長する過程で出てきます。
子どもの行動に評価をつけるのではなく、まずは共感してあげる。
そのことで子どもは自然と、自分の行動を客観視することができて、「自分がどうしたらいいのか」を考えられるようになります。
つまり何事にも挑戦しけるような自立心、向上心が育っていくんですね。
子どもの行動に、親の判断で「イエス」「ノー」を付けていってしまうと、リスクがあるという話です。
褒めず叱らずを続けた結果…
褒めない、叱らない育児と聞くと、とても難しそうな気がしますよね。
私も初めてアドラー心理学を知った際、この言葉に衝撃を受けました。
そんな事は出来るはずがない!と強く思っていましたが、試しにアドラー心理学的な育児を我が家に導入し約10年。
テストや勉強に関して「褒める、叱る」を徹底して行わず、これは息子の課題!と、私はひたすら共感するように心がけています。
そのせいか、勉強に関しては・・ですが、苦手な部分は自主的に取り組みますし、通知表も「悪い」と感じた事はなく今に至ります。
なにより、私自身が子どもたちの課題に首を突っ込まないことでストレスがなく、気持ちが楽な事が、私の中でアドラー心理学の最大の魅力だと思っています。
何度も言いますが、褒めることも、叱ることも時と場合によってとても大切です。
褒めてはいけない、叱ってはいけない・・ではなく、褒めなくても、叱らなくても子どもが自主性を持って育つ方法だと思ってくれると幸いです。
★この記事を書いた人:Y★
アドラー心理学のカウンセラーをしている30代のベテラン主婦。子どもは小学生の男の子が二人。
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